冨樫とエミネムを応援する日記

ほぼHUNTERXHUNTERの感想

 ミスト フランク・ダラボン 2007 95点

ミスト [DVD]

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ネタバレ全開 未見の方はやめといた方がいいw
 好評ばかり聞いていたのでどんなもんかと思ってレンタルしたら、確かによかった。特にラスト15分の衝撃!という煽りが正しくその通りでキター!!エンドロールの余韻も何とも言えず、予想を上回る出来で満足。とはいえ、見てスカッとするとか、そういう類のものでは決してなく、むしろ多くの人には後味悪いものになったかもね。

 この映画について「霧の中にいる化物より、追い詰められた人間の方が恐かた。」という感想をよく聞くけど、僕からしたらそれは正確ではない。だって、どう考えてもあのグロテスクな化物の方が恐い(笑)そりゃ生贄にされたりするのは勘弁でも、だからといってあの蟲のような異形のモノたちと仲良くできるはずがない。ヨハネの黙示録終末論を唱えてたオバサンをみんなイロモノ扱いしてたけど、いやいや実際に怪物でてきてますから!という話なわけで(笑)あの状況に陥ってしまったら、彼女に分があるように思ってもおかしくない。(まぁ、アレははっきりと米国内における福音派連中を想起させていて、結末からいっても批判的なのは明らかだけど。)

 では「恐怖で正常な判断ができなくなった人は恐ろしい」をあくまで一面でしかないとすると、この作品の本質は何なのか。…それはシンプルに「何が正しい行為か本当のところはわからない。」=「正しいと思ってやっても間違ってることがある。」=「世界は複雑」ということで、単純な「成長物語」等に対してのアンチテーゼでしょう。

 思い返して見れば、スーパーにいた人々が助かる術はあるにはあった。相互信頼の元、情報交換をきちんとして「必ず助かる!!」という揺るぎない希望の下、一致団結して立て篭もっていれば、全員無傷で助かった(と思う)。しかし実際に起こったのは負の連鎖。

・ファーストコンタクトで、功名心から若者が自滅。
・犠牲をはらって得た情報も、過去の因縁から信じてもらえない。(味方になれば強キャラだったろう人に!)
・情報をもってる軍人は勝手に絶望して自殺。
・第一回スーパーの皆さんvs怪物戦にて焦って自ら火だるまになる人発生。
・火傷治療のため薬取りに行ったら被害拡大。
・宗教おばさんを射殺。(意見合わないやつは殺した!)
・ラスト(早とちり)

 でも、それぞれにそうしてしまった相応の理由があるよう描いているからこの映画は素晴らしい。特にラストでは、様々な伏線(怪物に殺させないという子供との会話、拾った銃etc)のおかげで、完全にああせざるえないようになっている。六本足の巨大なやつが出てきた時は、BGMも相成って神々しさすら感じてしまったし。そもそも軍のミスによって次元の向こう側からやってきたという設定が巧い。

 ただ、それでも最終的なラストはあれなわけで、主人公にそこまで思い入れのなかった僕としては人類大勝利キタ!!!!と思ってしまったのも事実(笑)スーパーとか一部の町しか映さないで世界滅亡なんてセカイ系まんまじゃん!社会をみせてくれよ!軍と政府の行動をさぁ!!という従来のハリウッド的な作品を頭の片隅では望んでいたので(六本足で心が折れかけたけどがんばったw)最後のシーンでぶっちゃけ拳を握ってしまった。そして、なんて希望に溢れた人類讃歌の映画なんだろう!ジョジョだよジョジョ、と早まった解釈をしかけたり。。いやホント、今でもミストに希望があるかなしかで聞かれたら「アリ」と答えるよ!最悪のケースは旅団全員が死んで蜘蛛がなくなること byフランクリン なので。

 いずれにせよ「正しいと思ってやっても間違ってることがある。」が最大のテーマだと解釈したので、これを米国の「反省映画」に位置づけて、エンドロールのヘリ音をイラク戦争などに繋げるのも、アリ。複雑だからこそいろんなものに応用できる。次世代のエンターテイメントの名に恥じない見事な作品だた。