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- 作者: 森達也
- 出版社/メーカー: 朝日出版社
- 発売日: 2008/01/10
- メディア: 単行本
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率直な感想を言うと 「森さん、堂々巡りの深い森の奥に連れて行かないでください。」
正直、困りんす。死刑への理解を深めることによって、存置派が以前より身近なものになってしまったのだ。簡単に言うと、遺族らの「同じ空気を吸いたくない」という意見への反論が非常に難しいと「改めて」考えさせられる。これは、ぐるぐると回り続けてしまうから厄介極まりない。
モリのアサガオ―新人刑務官と或る死刑囚の物語 (1) (ACTION COMICS)
- 作者: 郷田マモラ
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2004/12/06
- メディア: コミック
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…死刑制度に問題があるとは思います。でもそれで死刑廃止とは言えないな、という思いがありますね。…やはり考えるべきは被害者感情なんです。でも被害者が百人いれば百通りの感情があるわけで、それを考えると、また堂々巡りになっちゃうのだけど… p53
言いきれはしないんですけれどね。どちらかと聞かれたら、ちょっと賛成側かなという、ほんの数ミリです。…死刑って本当に究極の罰ですよね。だからこそ死刑囚が人間性を取り戻すとか、プラス思考の感情が芽生えるとか。そういうのもありなのかなって…思います。p54
鈴木さん(担当編集者)の言葉
森さんから死刑をテーマにしようと言われたとき、友人とか会社の同僚とか家族とか、いろんな人に聞いてみたんです。死刑についてどう思うって。聞けば聞くほどよくわからなくなってきまして…。たとえば命をもって償わなくちゃいけないことがあるという概念だけは残したほうがいいって言う人もいます。それがなくなったときに、何かバランスが崩れるんじゃないかと言うんですね。そう言われると、もしかしてそうかもしれないな…と思い始めたところです。それに、郷田さんがおっしゃったように、死刑になったからこそ反省するという人も実際にいますよね p55
こりゃ罠だな、とも思う。もっとシンプルに考えるんだ!
例えば、上の鈴木さんに対し「概念と制度は別だからwww」「制度の話なんだから、どこかで線を引く必要があるのは当然のことで、そこはドライにやらなければならんでしょ」「命をもって償わせるというなら、自分で殺せばいいじゃん」など。
また、本書内において取り上げられている「死刑制度の問題点」−−すなわち「不可視であること」−−に関しては、特に論を待つことなく、対処されるべき事柄であるから、うだうだと考える前に、とりあえず目の前のゴミは拾え的な言い方もできる。
悩ましくさせる本でもあり、アクチュアルな本でもある。どっちだろう。
一応、(これを読む前の)僕の死刑への考えを書いておくと
死刑制度→反対
理由1冤罪がある
理由2死刑でもって(遺族の)感情回復をさせることは、、だめなんじゃね(アムネスティ派)
理由3一般の存置派が言うような凶悪犯罪への抑止効果がない
(軽犯罪・性犯罪に対してはあるんだっけ)
理由4単純に殺したくないし
この理由2が、本書を読むことによって、揺れ動いた(折れてはいない)。もっとも、大多数の存置派の皆さんは1と3を全く知らない(賛成8割の背景には感覚的な問題の2があるとはいうけれど)という確信があるので、その点では静香ちゃんを評価している。
そうなんだよなー。こういう本読む時によく思うのは 「前提条件」にすら、圧倒的多数は辿り着いていない。。ということで、まぁ自分も大半の事に関してはそうだから仕方ないのかねぇ。。。昨日、東せんせが児童ポルノ関連でアクセスにでるというから聞いてみたけど、ラジオにわざわざ意見言いにきている人ですら、目も当てられないレベルでしょんぼりした。パーソナリティの藤井誠二や渡辺真理も、極めて微妙だったし。。
あ、そうそう、この本のプラス面の収穫として藤井誠二との対談を読めたことを書いておこう。正直に言うと、被害者や遺族と距離をつめていった彼を、僕は少し、じゃなくて、ざっくり切って捨てていた。だから
- 作者: 宮崎哲弥,藤井誠二
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/09/20
- メディア: 文庫
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- 作者: 藤井誠二
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/02/27
- メディア: 単行本
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でも今回、森との対話で「逡巡は当然ある」と言う彼をみて、ほっとした。著書をちゃんと読めば、文脈から伝わってきたのかもしれないけど。「俺被害者じゃないからわからんよ」を盾に、色々と軽視してた部分があったのだと反省。
ちなみに最後に収録されている本村さんの手紙は威力があった。光市関連を割と熱心にみていた身としては、心底驚く(マスコミイメージとのギャップ)ということはなかったけど、相変わらずの真摯さに、本当に恐れ入る。同時にマスコミまじで何やってんの!双方肝心のトコロが伝わってないぞ!と強く思う。勝谷とか、死ねばいいのに。
まぁあれです。宗教について、よく聞く川(例え)の話です。キリスト教は究極的には反知性主義だけど、知性の限界を知るために、徹底的に追求する。そして、最後のギリギリのところで、命がけの飛躍をして「知性の川」を飛び越える。けれども、原理主義や、しょぼい宗教は「どうせ飛び越えるんだから」と、最初っから向こう側にいってしまう。そうすると大体失敗して、変な所に着地する。みたいな話。死刑に関してもこれ。「まずは実情を知ろうね」と。